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実はこれでお終いじゃないんです
間宮宛に一本の電話が掛かって来たのは、あの面接から二日後のことである。
「事務長、お電話ですけど・・」
三浦は保留にした電話の受話器を片手に、間宮に声を掛けていた。
「私⁉ どこから?・・お客様ですか?」
間宮は自らを指さした。
「いいえ、メンバー様じゃないみたいで・・ミタライって仰っておられますが」
「あっそう⁉・・ハイお電話代わりました、間宮と申しますが⁉」
間宮は三浦から受話器を受け取ると、自分を名乗った。
「あっ、事務長さんですか? 御手洗です・・覚えていらっしゃいます?」
「ミタライさん?・・もしかして?・・キャディさんの面接に来られた、あの御手洗さん?・・ですか?」
「そうです、実はあれから5人で駅構内のカフェに入りましてね、LINEの交換やらで久しぶりに女子会の真似事やらをヤッチャイましてね・・」
「それは何よりでしたね。それで・・どうして私にお電話を?」
「それがですね、事務長さんの話題で盛り上がってしまって・・バスの中の、あの事務長さんの激昂された本性に私たち皆が惚れちゃいましてね・・」
「それは、光栄です・・」
「その挙句ですよ・・勝手なんですが、そちらさえ宜しければキャディのお仕事、させていただけないかな~てことになりましてね・・」
「へぇー・・それは、それは有難いお話じゃないですか、是非お願いいたします・・
もしかして5人の方、皆さんのご希望と理解して宜しいのでしょうか?」
「そうです、皆で話し合って決めたことなんです」
「5人揃ってですか、それは有難い。早速、説明会などのご連絡差し上げても宜しいでしょうか?」
「是非、お待ちしています。あっそうだ、他の皆にも連絡、お願いいたします・・それでは今日のところは、これで失礼いたします」
間宮は俯いたまま受話器を静かに戻した。そして一秒・二秒・三秒・・無言が続いた。
事務長を案じた三浦が言葉を発した。
「事務長!大丈夫ですか?」
間宮は右手に小さく拳を握り誰にともなく、小さくガッツポーズを見せた。
「事務長? まさか先日の応募の方・・決まったんですか⁉」
「そうだよ、三浦君! やったね、君たちスタッフのお陰だよ」
「良かったですね! でも、今日になって・・どうしてなんでしょう?」
「いいじゃないか、理由なんて・・そのうち分るさ!」
―完―
(このドラマはフィクションです。登場する、団体・地名並びに人物などのお名前は全て架空のものといたします。)
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