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八.
コウと僕の持つ心許ない松明の灯りしか無い、凹凸だらけの狭い穴をどれほど進んだか、正面から眩しい光が差し込み始め、やがて僕らは洞窟の外に出た。
そこは、穏やかに晴れた湾だった。
「こんな所があるんですね」
僕は素直に、一年ぶりのまともな天候に感動して顔を綻ばせた。
「あぁ。
あそこをよく見てみろ、海の底」
コウが指差す方に目を凝らすと、水面の波にきらきらと陽光が反射してよく見えなかったが、しかしあれは、恐らく、間違いなく、
「あれは……気象制御船……ですか?」
「あぁそうだ。
あれは元々あそこにあったものだ。
ハッキングを逃れた船の一つなんだと。
世界には未だにこういう、気候制御の保たれた場所が幾つか存在するそうだ。
で……ああやって日々の疲れを癒やしてるわけだ」
とコウが次に指差した先には、浜辺に建てられた大きなログハウスがあり、その周辺で上級真人と思しき者たちがくつろいでいる姿があった。
その中の数人が僕らの姿に気が付くと、ログハウスの裏の小屋から、縄で縛られた迷彩服の兵士を一人、荒々しく引きずり出して近付いて来る。
僕らの元に辿り着いた上級真人は、地面にその兵士を転がし、
「こいつは文明を用いて我々を滅ぼしに来た『堕人』どもの斥候だ。
殺せ」
僕に大鉈を手渡した。
「重大な儀式だ。
さあ、やれ」
真剣で険しい目つきになったコウが、僕の肩を、ぎゅっと握った。
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