明るい彼

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もぐもぐ…もぐもぐ… 私は無言で、目に見えない心の耳栓をして… 全て聞こえない、気にしないふりをして… お母さんが一生懸命作ってくれたお弁当のおかずをゆっくりと口に運ぶ。 あ…今日は昨日の夕飯の…美味しかった唐揚げが3個も入っている… エビフライもすごく大きい… 美味しい…  すごく、美味しい…      泣かない…  泣かない…           泣くな、負けるな、私…  私はもぐもぐと、愛情たっぷりのオカズを口に運ぶ。 私には愛に溢れた家族がいるし…私は幸せ… これくらい、まだ全然、我慢できる… この前テレビで観た。 世の中には、私より恵まれない子供たちがいっぱいいる…家族もいない… 仮にいても、実の親に虐げられている子供だって、沢山いる…。 でも、私には家族がいる…ぶっきらぼうだけど優しいお兄ちゃんも…。 今、大好きな本もいくらでも読めて授業だって受けられる…これでいい… もぐもぐ…もぐもぐ… 加奈たちの、あくまで「イジリ」という便利な名の…「いじめ」に耐えながら、私は一ヵ月過ごしてきた…いまだに友達も出来ぬまま… そんな私の前に現れた、 太陽みたいに眩しい男の子、青木斗真君が‥ 殻に閉じこもっていた私を… 暗い暗い闇の世界から…救ってくれたんだ…。 彼は…家族以外に、私が初めて見つけた、光…そのものだった…          
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