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現実
一月前のこと…
また、思考が遡ってしまった… いけない、今が現実だ。
さて…今日はどうしよう…
私がいまだ机に座ったままどこで食べるか悩んでいる間に、既に加奈たちが教室できゃあきゃあと雑談をしながら、お弁当を広げ始めていた。
もう…今日はいいや…
教室で、このまま、目立たないように静かに食べよう…
教室以外…中庭か屋上、他のどこかで食べている間に…また加奈たちに何か隠されてしまう可能性だってある。
だから、比較の問題でしかない…
私は静かに…お弁当のハンカチを広げた。
あ…今日は豚肉の生姜焼き… お兄ちゃんの好きなメニューだ…。
「ねえねえ…」
聞きたくなくても加奈たちの声は大きく、いつも丸聞こえだ…。
きっとまた、私の悪口か…他の気に食わない人達の苦情が延々と始まる…
そう思っていると、
「ねえねえ…斗真君って、超!!イケメンじゃない…?背、高いし…うちのクラスの男子が全て霞んで見えるわ~…ほんと…どの角度から見てもカッコいい…」
「だねだね…私もそう思ってた。斗真君、イケメンなのに超気さくだし…ここに来て数日で、もうあの荒川たちと仲良くなってんじゃん…ほらさっきも学食連れ立って行ってたしさ…!」
荒川君は…もともとこの教室で目立っている男子の一人だった…。
彼も斗真君と同じくらい背が高くて…その名前のイメージと同じ、少し荒々しい口調の強面の男子だった。
荒川君にも取り巻きのように、数人の男子がくっついている…。
でも加奈たちと違うのは、誰か特定の人に対して意地悪なんてしないこと…
「そうそう、荒川とか特に、最初はとっつきにくいもんね…なのにたった2~3日で…もう、あんな親友みたいに、肩組んで学食行くとか…凄いわ…」
「はあぁ…私、斗真君のこと、好きになっちゃいそう…彼女とかいるのかなぁ…いたとしても、ここに転入してきたことで、その子と別れてたりしないかなぁ…はぁ…カッコいい…」
「あんた最悪、めちゃくちゃ、自己中だね~…」
「えへへ…でも、あんただって…」
あはは、あははと楽しそうに…斗真君の噂話をしている加奈たち…。
「…どっかの誰かさんとえらい違いよね…打ち解け方が神技…最初に来た方は暗いったらないわ…マジ、消えて欲しー…」
ああ…やはり、耳栓が欲しい…
いきなりの、私への飛び火だった…。
比べないで欲しい… 私はあんな風には、絶対になれない…。
私はまた、透明の耳栓をして、
甘い生姜焼きを口に放り込んだ。
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