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あれ…あれ…
ない…国語の教科書が、ない…
昨日の夜、確かに鞄に入れた気がする…。
そもそも私は、忘れ物なんてしたことないし…
え… ちょっと待って、どうしよう… ない…やっぱりない…
「では… えっと…安達さん、17ページの4行目から読んでみてください…あら…安達さん、教科書は…?忘れたの?」
「… あ…はい、ない…みたいです。すみません…」
忘れたとは言いたくない…
うん、…やっぱり私、絶対に、鞄に入れた…
「じゃあ…そうね、隣の佐藤さん、机くっつけて、ちょっと貸してあげて…」
先生の声。
「はーい…」
右隣にいる佐藤さんがガタガタと机を移動してきて、私の横にくっつけてくれる。「あ…ありが…」…とう、と、小声で言いかけると、
「チッ… めんどくさ…」皆には聞こえないほどの小声で、彼女の口から…確かにそう聞こえた。
私の胸に、チクリと突き刺さる、言葉…
「ごめんなさい…借ります…」
私はペコリとお辞儀をして、彼女の教科書を開いて立ち上がる。
「… … …」
ああ…教科書はどこだろう… もしかしてどこかに落とした…?
私の勘違い…かな…いやでも、絶対入れた… ああ… なんで…?
私は暗い感情を抑えながらも、淡々と、朗読を続けた。
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