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その日の放課後、
誰もいなくなった教室で一人、私は必死に国語の教科書を探した。
昨夜の自分の記憶を何度辿っても、絶対に鞄に入れた…
そうとしか思えなかった。
だから、まっすぐ家に帰る気にならなかったのだ。
まず、自分の机の引き出しの中、ない、空っぽ。
教室の後ろの棚、そこにもなかった。
そうなると、通学路…ここにくるまでの道のりでどこかに落とした…?
廊下か、下駄箱周辺…道の途中…?
そもそも本当に落としたのかな… もしかして誰かに…?
そんな感情が湧いてきそうになるが、なんとか押しとどめ、私は諦めて帰り支度をする。
窓の外が夕焼け色に染まり始めた。あまり遅いと両親が心配する…
帰りの道を確認しながら歩いたら、もしかしたらどこかで見つかるかもしれない…薄い期待を胸に、鞄を手にする。
そう、なんとか前向きに考えて私は階段を下った。
下駄箱を開けて、愕然とする…。
なくしてしまった教科書が…そこにあったからだ…。
2年3組 安達明里
名前もある…間違いなく、私の国語の教科書だ…
なんで、下駄箱の中なんかに…。
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