ある男

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私が座っている位置から数メートル先…斜めの方向に位置するボックス席。 そこに、私の対面方向に座る一人の男。 サングラスをかけていて、目元は全く見えない。 足を組んで、身体を中央の通路側に傾くようにしてかなり斜め方向に… つまり、こちら側を向いて座っている男がふと、私の視界に入る。 何気なく、そちらを一瞬だけ見やると、 その男の口元が…微笑んでいる… ニヤリと…こちらを見ながら笑っているようにも…見える… サングラスで目線がわからないために、 こちらを見ているという確証はないが…なんとなく気味が悪い… 私は素知らぬフリをしながら、できるだけ自然に、ゆっくりとその男から目線を外す。 あの男…どこかで見たことがある…      何度か…         いや違う、何度もだ…。                       どこで見たのか…私は記憶をたどる…思い出せない…  いや、…思い出した… 正確に言うと…思い出したというより… たった今…、気付いた…。 男は多分、毎日のようにこの電車に乗っている男… しかも恐らく…私が乗車する駅から…     つまり私と同じ駅から、朝、乗車している…男。 何度か、駅のホームで見かけた気がする…  その男、だった…
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