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現時点で、杉崎さんの彼女でもない私が…杉崎さんの過去の女性とのそういう行為に、嫉妬するなんて、
お門違いも、いいとこだ…
本当の彼女である林さんの立場なら、ともかく…
そうだ、拓海…
さっき、ラインが何通か来ていた…
着信履歴も、増えてるかも、しれない…
でも、やっぱりもう一度確認するために、見ることは出来ずにいた…。
怖い…今は、見たくない… 今だけ、何も考えない…
私はもやもやした気持ちを頭の隅に追いやりながら、ナイトウェアに着替えて、すぐさま布団にもぐりこむ…。
ぎっ… 杉崎さんが洗面所の扉を開く音に、ビクンと身体が震えた…。
ドクドクドクドク…
さっきまで穏やかに会話していたことが嘘みたいに、
心臓が早鐘を打つかのように物凄いスピードで動いている…
「水無月さん、お待たせ… さすがにもう、寝たかな…? 」
横を向いていた私に、杉崎さんの優し気な声が、降り注ぐ…。
「いえ、まだ…」
「そう… 隣、お邪魔するね…電気、消すよ?」
「はい…」
ぱちりと、杉崎さんの手によって、部屋の電気が消される…
ベッドサイドの小さなランプだけが、主張しない程度に淡い光をともしている…
サラリとしたシルクのような生地のシーツをめくって、遂に、杉崎さんがベッドに入ってくる…。
ギシリと、ベッドの軋む音…
杉崎さんの身体の重みで、ベッドが少しだけ沈むのを身体で感じる…
「…お、お休み、なさい…」
杉崎さんに背中を向けたまま、なんとかそれだけ言うと、
「なんか、寂しいな… 水無月さん、こっち向いて…」
「… … はい… …」
私はゆっくりと、寝返りを打つようにして、杉崎さんの方に身体を向ける。
「…水無月さん…もっとこっちに、おいで…ほら…ここ…」
杉崎さんが、まるで、子供を抱きとめる準備のように、ゆっくりと腕を広げる…。
ああ… だめだ…
吸い寄せられる…
「はい… 」
私は小さくうなずいて、
杉崎さんの方へ向かった…
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