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杉崎さんの優しい声に導かれるように…
私は杉崎さんの両腕の中に…おずおずと身体を進めた…。
それでもまだ、身体の間に少しの距離を保って…
「水無月さん…遠いな、もっと、こっちに、来て…」
そっと、肩を抱かれて、杉崎さんの方にゆっくり、引き寄せられる。
熱い胸板に、頬をすりよせる…
あったかい…
杉崎さんの鼓動が…聞こえる…。
トクントクン… …
心地よい… 心臓の音…
「…こうしてると、すごく、暖かいね… なんか、嘘みたいだ…俺の腕の中に、君が…」
「…はい…本当に…」
「… 水無月さん… 今、…あのさ…」
「…はい…?」
「…俺と、ここに来たこと…俺と…こう、なったこと…後悔……してたりする…?」
後悔… 後悔、なんて…
私は考える…
私には拓海がいる…
杉崎さんにだって、林さんという彼女がいる…
今日のこと…杉崎さんに近付いたこと…
近付き…過ぎたこと…
淫らな女の欲望のままに、甘やかに…激しく抱かれたこと…
間違いようもなく、誰に聞いたって、駄目なことだ…
お互いに交際相手に気持ちを話してから、納得したうえできちんと別れ、杉崎さんと… そうすべきだった…
絶対にそう… なのに…
素敵過ぎる杉崎さんを前にして…今夜は、帰りたくないと思った。
そうやって…
私の理性はあっけなく、崩れ去ったのだ…
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