出会い

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「…新しくわが社に入所してきた方々、ようこそ!これから一緒に…」 歓迎会幹事の、陽気な挨拶が始まる。 入所してからずっと感じていたことが頭をよぎる。 この幹事の人も含めて、なんだかこの会社の社員のひとたち、…割合として、社交的な人が多い気がする… 私はただただ、お菓子が好きで…とにかくその仕事に携わりたい一心で、この会社を目指した。 でもこの先、どちらかというと内向的な性格の私が、こんなに明るい人が多くて、飛ぶ鳥を落とす勢いのある革新的な企業の中で…本当にやっていけるのだろうか… 少し不安になる。 「…では、かんぱーい!!」 …あ、だめだ…。 こんな席で、また一人、物思いにふけっていた。 「…乾杯~」小さく声を重ねながら…コップに注がれたビールを遅ればせながら皆に合わせて上方へ掲げる。 「では…しばし、ご歓談を…」 その挨拶を合図に、各々の席で、がやがやと雑談が始まった。 いそいそと、各テーブルに運ばれるビールや、料理の数々… 残念ながら一人一人で食べられるものはなく、全て取り分け式の料理ばかり…。店員さんいわく、4人一皿で…とのこと。 私は飲み会や食事会での、この形式が本当に苦手だった…。 特に友人ではなく慣れていない人との食事の場合…気を遣って皆の分を先に取り分けようと思えば、なぜか緊張してこぼしたりなんらかの失敗をすることが多く… 気が進まない…けど…。 ぱっと見た感じ、杉崎さん、目の前の林さん、林さんの隣の名前がまだわからない男性…。この4人の中では…完全に私が下っ端に違いない… 失敗ありきで…やらなきゃダメよね…新人だし…。 私はそう考えて、咄嗟に、取り分け皿に手を伸ばそうとした。
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