愛しき人

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あたしは、翔之介さんを手の平に包んだまま、自分の布団に入った。 「沙穂さま……」 あたしは、翔之介さんを抱き締めたかった。 普通の男の人であれば、そうであろう、その広い背中に手を回し、その逞しい胸に、顔を埋めたかった。 でも、叶わぬ夢なのだ。 そして、その彼は、今、その命さえ危うい。 あたしは、翔之介さんを、自分の枕元に寝かせた。 「……翔之介さん……好きなの。誰よりも、大切なの……」
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