愛しき人

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アッっというまに、ライターの火は燃え広がった。 武家屋敷の母屋を、炎が包んだ。 母屋のあたしの部屋には、翔之介さんが、ぐっすり眠っているのだ。 あたしは、母屋に向かいながら、大声で叫んだ。 「翔之介さ―――んッ!!! 火事よッ! 逃げてーーッ!!!」 ああ、翔之介さん!!! こんな遠くから、声が聞こえる訳ない。 あたしは、広い武家屋敷を恨んだ。 炎は、もう、母屋を焼きつくそうとしていた。 真っ赤な炎が立ち上がる。 消防車のサイレンが聞こえた。
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