74人が本棚に入れています
本棚に追加
アッっというまに、ライターの火は燃え広がった。
武家屋敷の母屋を、炎が包んだ。
母屋のあたしの部屋には、翔之介さんが、ぐっすり眠っているのだ。
あたしは、母屋に向かいながら、大声で叫んだ。
「翔之介さ―――んッ!!! 火事よッ! 逃げてーーッ!!!」
ああ、翔之介さん!!!
こんな遠くから、声が聞こえる訳ない。
あたしは、広い武家屋敷を恨んだ。
炎は、もう、母屋を焼きつくそうとしていた。
真っ赤な炎が立ち上がる。
消防車のサイレンが聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!