愛しき人

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あたしは、言い淀んだ。 「い、いえ、その、5センチくらいの小さい男の人なんです」 「はあ?! ふざけないでください!」 その消防隊員は、怒ったように、あたしを、振り払った。 あたしは、野次馬の中に転んだ。 足元に、はやてがいた。 「はやて! はやて、翔之介さんは?!」 しかし、あたしは、翔之介さんと違って、はやてと話せない。 はやては、しきりに、燃える屋敷に向かって鳴いた。 あたしは、そのはやてを抱き締めて、消防隊員が、必死で消火しようとしている燃える屋敷を見つめているしかなかった。
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