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……武家屋敷は、全焼した。
あたしは、瓦礫の山となった母屋の前に立ち尽くした。
結局、翔之介さんは、見つからなかった。
あたしは、自分の部屋があった辺りに、しゃがみ込んだ。
はやてが、近くの瓦礫の山に向かって鳴いた。
あたしは、そこに、焼け焦げている見慣れた手拭いを見つけた。
翔之介さんの布団だった。
あたしは、その焼け焦げた手拭いを抱き締めて、号泣した。
もう、二度と、あの優しい、誠実な、凛々しい、翔之介さんには、会えないのだ。
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