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パァン! と渇いた音がひとり暮らしの部屋に響く。さっきまで映画館で繋いでいた右手を思いきり振るい、彼の頬をひっぱたいた。
衝撃で、彼は私から視線を外す形になり、そのまま止まる。
私の手のひらは震えているし、彼の顔は戻ってこない。
「奥さんとは別れるって言ったよね」
「ごめん。もうしばらく待って欲しいんだ」
正面に向き直った彼は、でも視線は合わせず、うつむき気味のまま続ける。
「本当に、夫婦としては終わってるんだ。でもやっぱり、子どものことを考えると」
「付き合う時、私に子どもたちのお母さんになって欲しいって言ったよね。そのつもりで、こっちも関係を続けていたのよ。私じゃ、だめなの?」
彼の言葉が終わるのも待てず、言葉の途中から被せるように気持ちをぶつける。
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