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「だめじゃないよ、ただ……」
「ただ、何?」
「嫁と喧嘩してるのを子どもに聞かれてね。『お父さんとお母さん、別れたりしないよね』って泣かれてしまって」
そんなの知らない。泣かせる覚悟はしていたはずだし、今泣きたいのはこっちだ。
思わず責めるような口調で、彼に言って欲しかった言葉を投げつける。
「ごめんな。お父さんとお母さんは別れるんだ。どっちと一緒に居たい? って当然聞いたのよね?」
そんなことを彼が言うはずないのは知っているから、嫌な言い方でしかない。彼は顔を上げ、目を大きく開いて責めるように私を見た。
急にスイッチが入ったように、口を縦に大きく開け、声も大きくなる。なぜだろう、鳥のヒナが餌を欲しがっている顔に似ていると思った。
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