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「そんなこと……言えるわけないだろ!」
「『そんなこと』をする約束を私にしたのはあなたでしょ」
「だからもう少し待ってって言ってるじゃないか! それを……君がそんな意地悪な人だなんて、知らなかったよ」
「こっちが何年待ってると思ってるのよ」
彼はひとつ、大きくため息をついた。さっきまでの威勢の良いヒナ鳥の面影は消えている。
「もういい。もう終わりにしよう。もう、待たなくていいよ」
「そうね。もう待たないわ。せいぜい、これからは奥さんを大事にしてあげるのね」
そのまま、彼は出ていった。私は自分のお腹にやさしく右手を添えて呟く。
「今日は、あなたのことを話すつもりだったのにね。ごめんね」
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