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◇ 「京、昨日返事なかったけどなんかあった?」 翌日、やっとそう切り出せたのは既に陽が落ち切った夜だった。 今晩は京から連絡があり、俺の部屋へやってきた。 いつも通りの定位置で、ゲームの続きをしながら、京の顔を見ずに済むタイミングでようやく俺は昨夜からの吐き気を口にした。 「ん?ああ、あそんでた」 「…へえ、……誰と?」 オンライン上で、見ず知らずのやつに攻撃を食らう。俺のキャラクターから血が出る。生身の人間がこんなに分かりやすく傷つくなら、今の俺は緊急手術を受けても生死を彷徨う運試しの体だろう。 いっそ死んでリトライさせてくれ。俺のどこがおかしくて、京だけを選ぶのか、説明してくれ。俺の取扱説明書を地獄で受け取らせてくれ。 京のキャラクターが俺を助けにくる。待ち構えていた敵を返り討ちにしながら京が言った。 「3年の三和 美玲って人」 実名まで晒して教えるわけね。京の返り討ちにされた敵に初めて同情した。まさかお前もここで死ぬとは思わないよな。俺もだよ。
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