26人が本棚に入れています
本棚に追加
顔を上げようとすればそれよりも先に、京が俺の首筋へ顔を近づけた。
すん、と京の高く綺麗な鼻が俺の肌の上で優しく音を立てる。
「……この匂い、どっかで嗅いだ気がする」
何気なく呟いた京の言葉に、俺はぴたりと動きを止める。
そんな俺を見て、京の美しい瞳がゆらりと半円を描いた。虹はいつだって予告なく現れるものだ。
「思い出せないけど──真昼には似合わないね」
京の心理など知り得る人間などいない。
アダムとイブは禁断の実を食べた。
俺にとって京が禁断の実であるように。
最初のコメントを投稿しよう!