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顔を上げようとすればそれよりも先に、京が俺の首筋へ顔を近づけた。 すん、と京の高く綺麗な鼻が俺の肌の上で優しく音を立てる。 「……この匂い、どっかで嗅いだ気がする」 何気なく呟いた京の言葉に、俺はぴたりと動きを止める。 そんな俺を見て、京の美しい瞳がゆらりと半円を描いた。虹はいつだって予告なく現れるものだ。 「思い出せないけど──真昼には似合わないね」 京の心理など知り得る人間などいない。 アダムとイブは禁断の実を食べた。 俺にとって京が禁断の実であるように。
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