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京の母親が夜勤の時、京はよくうちに泊まりに来た。 世話焼きな母親と一目で京を気に入った俺にとっては、京がうちへ泊まることは苦どころか、幸福のかけらを溶かして飲み込んだみたいだった。 俺のベッドに京とふたりで横になる。 枕元に置きっぱなしになっていた絵本を京が不思議そうに眺めながら手を伸ばした。 「これ読んでたの?」 「うん。父さんが買ってきたやつ」 父親は酔うと何故だか俺に絵本を買ってきた。酔いの中で選ばれた絵本に脈絡はなく、海外のものも日本のものも、シリーズものも、てんでバラバラだった。 「まひるの部屋には本がたくさんあるから、楽しいね」 身体を起こした京は太ももの上に大きな絵本を乗せて、ページに目を走らせながら、ゆっくりと捲っていく。 真っ黒な瞳には、夜更かししてやっと見つけた時の流れ星のような輝きが詰まっていた。 「毎日来ればいいよ」 こっちを見て欲しくて言った。毎日来てくれればいいのにと思ったから言った。京の中で流れる星に自分を見つけてもらいたかったから言った。
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