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俺は既に一度読んでいたから、ページをめくっては夢中で読み耽る京を盗み見ては、その恍惚とした表情に伝染しては、頬を緩ませていた。 京は最後のページをじ、と見つめる。 人と違う右腕を持つイハーと同じく人と違う左腕を持つロロ。手を繋ぎ合うふたり。 「……鏡かあ」 そう呟いた京は何かを求め渇望するように、純粋な響きを持って、とても楽しそうに笑った。 小学校に入学しても、中学へ進学しても、京は当たり前のように俺の部屋へ来た。 京がそれを日常の一部として至極当然のように生活に組み込んでいるのが、俺にとっては優越そのものだった。 「真昼、また告白されたんだってね」 小学校の中学年あたりから漫画、ゲームへとふたりの時間を潰す道具が移り変わり、京の舌足らずは「まひる」から「真昼」ぐらいになった。 相変わらず「る」の部分が舌足らずで、それを聞くたびに、胸の中にじゅわりと腐りかけた糖度の高すぎる桃の汁が落ちた。 「女は泣くからやだ」 京は俺のベッドで枕を胸元に置いて腹這いになり、俺は、ベッドに寄りかかる。
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