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中学で陸上部に入った俺は、確かに帰宅部の京と過ごす時間は減った。 本来は京との時間を最優先したかったが、それはつまり、俺が「普通」である証明を同時にしなければならなかった。きちんと部活に励む中学生。部活が忙しなくて彼女なんて作ってる暇はない。口実。 部活が休みな日は俺は京を部屋に呼んだ。京は歳を重ねるごとに俺への執着が薄れていった。 ひとつのゲームをこよなく愛するというよりも、飽きる前に他のゲームに手をつけてはそれをやり尽くすまでは俺を忘れている。そんなふうに思えた。 だからこそ、俺の執着は酷く拗れた。 中一の頃、同級生の女が自殺した。 俺にとっては名前ぐらいしか知らない女だったが、それから京の言葉はどこか浮世離れしたものへと流れ移った。 「花栗くん、一緒に帰らない?」 「無理。」 部活の後、わざわざ俺を待ってたらしい女に声をかけられたが切り捨てて家に帰る。
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