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その間に京にスマホで〈もうそろ帰るんだけど、こないだの続きやらね?〉と連絡を入れる。が、家に着いても京からの返事はなかった。
「洗濯物回したいからお風呂先入っちゃって」
「んー」
京からの返信がないことが気になって、母親の言葉も軽く流す。
部屋に入って電気をつけ、ため息をつきながらカバンをフローリングの上へ置く。
「……」
その時、微かに、声が聞こえた。
俺は息を潜めるように自身の動きも封じる。
カバンの持ち手を握ったまま、前屈みで耳だけを澄ます。静かな部屋に相反して、やたらと速い鼓動と波打つ心臓の音が煩わしかった。
俺を生かしている心の音にさえ、京のことになると途端に価値が底へと落ちる。
「……あっ」
また、聞こえた。
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