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嫌な予感はいつだって正しい。
生存本能をきちんと今日まで残した遺伝子は、現代には見合っていない。いらんものばかり残して、必要なものは与えてくれない。
呼吸が、止まる。
「…はあっ、あ、朝吹く、ん」
京と俺の部屋は壁を隔てた向こう側にある。
小さい頃、どんどん、と壁を叩くと、どんどん、と同じだけの力で京は返事をしてくれた。
会えなくても、姿が見えなくても、俺たちは繋がってるんだと純粋に喜べていた俺は、今や地獄の血を飲んでいる。
京の声は聞こえない。女が性行為の際に響かせる喘ぎだけが聞こえる。
吐き気がした。
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