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「…………え?」
女神っぽい人は長い沈黙の後、斜め後ろを向いて手帳を取り出しパラパラめくりだした。
その手帳には白銀の表紙に淡い色のハートや星の模様が描いてあって「女子中高生でももっと大人っぽいものを使っているぞ」と呆れた。
そしてページを凝視し、再び前を向いてゴホンと1つ咳をする。
「えーと、よく来ましたね。勇者シンゴよ」
「やり直すなよ」
俺のツッコミは完璧な笑顔に跳ね返された。
「あなたはある者を倒すために私が呼び寄せました」
なんて迷惑な。
異世界転生とかに憧れは少しあったが、夢とはいえ、体験するとこんなに理不尽なものとは。
「人違いじゃね?」
さっきタクミって言ってたし。
「いえ、私が選んだのはあなたです!
その証拠にあなたはこの聖剣を抜くことができるはずです!」
「実は誰でも抜けるんじゃね?」
「そんなことは……ありません……」
とか言いつつ、女神っぽい人の目は盛大に泳いでいる。
嘘が下手だな。
というか、誰でも抜けるのか。
「なら、俺じゃなくてもいいんじゃね?」
「いえ、私は感じているのです!
あなたこそ、かの邪悪なシン王を倒す者であると!」
回れ右しようとした俺の足がピタリと止まった。
シン王?
魔王じゃなくて?
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