一 自由

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一 自由

 死の鼻先にみた。  巻き戻る世界を、私は揚々、自然に歩く。雲の水流も突き上げた。ねじの十字穴を潰しても、私だけはまだ巻ける気がする。ゆったりとした赤信号を帰ってゆく少女に、通りすがりにキスをした。旧校舎から盗み・塗り替えた旗、まつ毛の長い目を靡かせ、ハンカチの代わりに。  この世界は気分しだい。だって、LUCAが笑ってくれたから。よく飛ぶクジラ。  枕がありゃ  地獄じゃなきゃ  どこでも寝られる 鬼が言うのさ。  水辺に鳩がいた。背後から光線が射している。バスの窓から見れば、つらつらと。川はぼけたが、きっと映画のようにきらめいていた。今日は7月、梅雨明けのギラギラした晴れ。バスの窓から見た。羽ばたく鳩が橋の梁に止まる。誰かの葬式帰り。
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