10人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝-
友梨が教室で着席していると、突然辺りがザワついた。
友梨は何事かと思い横を見ると、そこには見た事ない顔の美男子が立っていた。
「え…誰…」
友梨がキョトンとして見た。
「おはよう…花城さん」
それは前髪を切ってスッキリした銀一の姿だった。
「え…。もしかして…む…向島くん…?」
友梨は目を丸くしながら銀一を凝視した。
「うん…」
銀一が照れながら頷いた。
「い…良いじゃんッ!向島くん、その方が良いよッ!いやー、ビックリしたあー」
友梨が笑顔で銀一に言っていると、銀一が静かに口を開いた。
「花城さん…」
「ん?」
「す…好きですッ!」
「え…」
突然の銀一の告白にクラスは静まり返った。
「えぇぇぇえーっっ!!?」
そしてクラス中、驚きの悲鳴が上がった。
「…っっ!!ちょ…ちょっと…」
友梨は慌てながら思わず銀一の手を掴み教室の外へ銀一を連れ出した。
「・・・っ!?」
ちょうど廊下にいた蓮は、友梨が赤い顔をしながら見たことないイケメンの手を引き、教室から出て行く光景を目の当たりにした。
「・・誰…アイツ…」
蓮はポツリと呟いた。
そこに友梨の友人である永奈と千恵が慌てて教室から出てきた。
「お…おぃ…。友梨…何かあったのか?」
蓮が二人にたずねた。
「あ…久岡くん…」
永奈が気まずそうに肩をすくめた。
「友梨、隣の席の向島くんから公開告白されたのよ、今」
千恵が涼しい顔で蓮に言う。
「え…。えぇぇえーっっ!?」
蓮が驚き慄く。
「久岡、アンタ…日頃の行いをせいぜい悔やむことね」
千恵がツーンとしている。
「・・っっ」
蓮が俯いた。
そんな蓮の様子を気の毒に思った永奈が静かに口を開く。
「まぁ…友梨は向島くんといきなりどうこうなるようなことはないと思うけど…」
永奈がチラッと蓮を見た。
「・・・いや…友梨、告白されたらOKしちゃうかも…。俺の時みたいに…」
蓮が呟いた。
そんな蓮の言葉を聞いた千恵が強めの口調で言った。
「アンタ…友梨を見縊るんじゃないよ?」
「え…」
蓮がキョトンとする。
「友梨は誰でも良いわけじゃないよ。自分も好きって感情がないとOKなんかしない」
千恵がギロッと蓮を見た。
「え…それって…」
「久岡くんから告白されてOKしたのは、友梨もちゃんと久岡くんの事が好きだったからだよ」
永奈は憐れな眼差しで蓮を見た。
「・・っ。俺だけが好きなのかと思ってた…」
蓮がポツリと呟いた。
千恵と永奈はお互いに顔を見合わせやれやれとばかりにため息をついた。
「久岡、まぁアンタは浮気したわけじゃないんだし…もう一回友梨とちゃんと話してみたら?」
千恵が蓮にため息混じりに言う。
「俺…もう友梨に嫌われたもん…」
蓮が肩を落とす。
「でも久岡くんは女子に初めて告白しちゃうくらいに友梨の事が好きなんでしょ?こんな事ぐらいで引いちゃって良いの?本当に向島くんに取られちゃうよ?」
永奈が珍しく強い口調で蓮に言う。
「永奈…」
そんな永奈を千恵は目を丸くしながら見た。
「・・・っっ」
蓮が拳を作りながら俯いた。
永奈と千恵は静かに蓮の顔を覗いた。
---
「む…向島くんっっ、えっと…急に、どうしたのッ!?」
友梨は銀一を連れて屋上入り口に続く階段の踊り場までやってきた。
「ごめん…急に…。昨日花城さんに言われて前髪切って来て花城さんの顔をはっきりと見たら、つい自然と口から出ちゃった…。俺、前から花城さんの事…好きだったから…」
銀一が俯きながら言う。
「・・・っっ」
友梨は狼狽えた。
「・・昨日…花城さんが久岡くんと別れたって騒ぎになってて…。急に付き合ってとは言わないけど、俺の事も…その…考えて…欲しいなって…思って…」
銀一が顔を赤くしながら友梨の顔をチラッと見た。
「え…。そうだったんだ…。あ…ありがとう…向島くん…。気持ちは…嬉しいよ。でも…」
友梨が俯く。
「まだ、久岡くんの事が好きなの…?」
銀一は真っ直ぐ友梨を見た。
「…私から振っといて何言ってんだって思われるかもしれないんだけどね…。これでもちゃんと好きで蓮と付き合ってたから…ごめんね…」
友梨は俯きながら言う。
「そっか…。でもこの先…もし花城さんがこのままだったら俺、諦めないから。花城さんのこと」
銀一のその言葉に友梨は顔を赤くし俯いた。
「だから…とりあえず、今は友達でいいや」
銀一がニッコリ笑った。
無邪気な笑顔を見せる銀一に、友梨は自然と力の抜けた表情になり微笑んだ。
「・・っっ。…うん…友達ね」
--
友梨と銀一は二人して教室へ戻った。
クラスメイト達は一斉に友梨と銀一に注目した。
「・・・っっ」
友梨は想像していた通りの周囲の反応にたじろいだ。
「ゴホンッ…。えーっと、私と向島くんは友達になりましたッ!」
友梨が大きな声で言った。
「・・・友…達…??」
その場にいた皆はキョトンとした。
「ね!向島くんッ!」
友梨が銀一を見た。
「うん。友達」
銀一が笑顔で応えた。
「え…付き合うとかじゃなくて?」
銀一の友人である長谷 隆ノ介がたずねた。
「うん、友達」
銀一が笑顔で言う。
すると友梨の友人である千恵は何かを察したかのように、すかさず口を開いた。
「ふーん…じゃあ、向島ッ!私達とも友達だね!私達、友梨の友達だから」
千恵がニッと笑いながら言うと、永奈も笑顔で銀一を見ていた。
「うん…よろしく」
銀一が笑顔を向けた。
「え…、じ…じゃあ僕も!!」
銀一の友人である隆ノ介が慌てて千恵達に向かって言った。
「おうよ、長谷ッ!よろしくなッ」
千恵がニカッと笑った。
「わ…私も向島くんと友達になりたーいッ!」
「私とも友達になってー!」
すると、クラスの他の女子達が騒ぎ出した。
「俺とも友達になってよ」
クラスメイト達は銀一達に駆け寄って来た。
そんな銀一達の様子を友梨は穏やかな表情で見つめた。
「友梨…」
すると、千恵と永奈が友梨に声をかけた。
「二人とも、ナイスフォローありがとう」
友梨は照れながら言う。
「まぁ、友梨がそんなすぐには靡かないだろうとは思ってたけどねぇ」
千恵が笑みを浮かべながら友梨を見た。
「友梨、やっぱり久岡くんの事…」
永奈が友梨の顔を覗く。
「・・・っ」
友梨は気まずそうな顔を見せた。
「まぁ…お互いに一旦距離置いてさ、冷静になってみるのも悪くないよね」
千恵が友梨の肩を叩いた。
「それでも友梨の気持ちが久岡くんに向いてたらもう一度向き合ってみたら良いよ」
永奈が優しい表情で友梨を見る。
「うん…ありがとう。二人とも」
友梨が笑みを溢した。
--
昼休み-
「花城さん、昨日花城さんが言ってた事…当たってた」
銀一が隣の席に座る友梨に声をかけた。
友梨は驚きながら銀一を見た。
「目を見て話すの…良いね。世界が変わった」
銀一が笑顔で友梨を見る。
銀一の言葉を聞いた友梨は笑顔で応えた。
「でしょう」
--
「慎也…。俺、昼いいや…」
蓮が机に顔を伏せながら言う。
「おぃおぃ…。お前、大丈夫かよ…」
慎也が憔悴しきった蓮の姿にたじろぐ。
「蓮先輩ーッ!」
その時、蓮に片想い中で日頃友梨に嫉妬させる為一役買っていた後輩の結城 ふみ香が蓮の教室を覗いた。
「あ、ふみ香ちゃん」
慎也はふみ香に駆け寄る。
「え…まさか、あれからずっとあんな感じとか言わないですよね?」
ふみ香が蓮を指差しながら慎也を見る。
「うん、そのまさか」
慎也がサラリと言う。
「嘘でしょッ!?そんなにぃー!?そんなショック受けてるのー!?」
ふみ香は唖然とした。
「うん。蓮の奴、意外と一途だから…」
「何それッ!!じゃあやっぱり友梨先輩の嫉妬を誘う為だけに私と仲良くしてたってことおッ!?それはそれで私の方がショックなんですけどーッ」
ふみ香は頭から湯気を立てる。
「まぁまぁ…。そう言うことだからさ…しばらくほっといてあげてよ…」
慎也がふみ香をなだめる。
「ヤダッ!無理矢理でも引っ張ってくッ!」
ふみ香は蓮の所に行こうとすると、慎也がふみ香の肩をガシッと掴んだ。
「ふみ香ちゃん、俺と昼食おうぜッ」
慎也がそう言うとギリギリとふみ香を引っ張って行った。
「ちょっ…私、慎也先輩には何の興味もないんですけどーッ」
「まぁまぁ」
蓮は、教室の入り口で慎也とふみ香が騒いでいることなどつゆ知らず、机に顔を伏せながら悶々と塞ぎ込んでいた…。
最初のコメントを投稿しよう!