大噴火の織姫と目覚めの彦星

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ある日、友梨が廊下を歩いていると、女子達に話しかけられてる蓮と鉢合わせた。 友梨「・・・」 蓮「・・っ」 友梨と蓮は一瞬目が合ったが、すかさず友梨が目を逸らしその場を通り過ぎた。 「…っっ」 蓮は顔を曇らせ友梨を目で追った。 「…って、蓮くん、聞いてるー?」 「・・え…聞いてなかった…」 「ちょっとー!何回言わせる気ーッ!?」 友梨が通り過ぎた廊下では、上の空状態の蓮と女子達の噛み合わない会話がしばらく続いていた…。 「・・・」 友梨は相変わらず女子にモテている蓮を後に、若干ムスッとした表情で歩いていた。 -- 放課後- ザー… 外は突然の大雨となっていた。 下校時、友梨は玄関で靴を履き外に出ようとすると、そこには大雨を眺めながら立ち尽くす蓮の姿があった。 「…っっ」 別れてからと言うもの、なぜにこうも偶然に遭遇してしまうんだろうと友梨はたじろいだ。 蓮が友梨に気づき友梨の方を見た。 すると、蓮に一人の女子が話しかけて来た。 「久岡くん、傘ないの?良かったら一緒に入ってく?」 「え…」 蓮は驚きながらその女子の方に顔を向けた。 友梨はチラッと蓮を見たが、無表情でその場を後にしようとした。 するとそこへ、銀一が外に出られないでいた。 銀一もまた、傘を持っていなかった。 「向島くん?」 友梨は銀一に声をかけた。 「あ、花城さん…」 銀一は驚いたように友梨を見た。 「え、もしかして傘無い?」 友梨は銀一の顔を覗いた。 「あぁ…うん。まさか今日こんなに降るなんて…」 銀一が苦笑いした。 「あ、じゃあこの傘使う?私…」 友梨がそう言って銀一に傘を手渡そうとした。 すると… ガシッ… 突然友梨が持つ傘を誰かが押さえた。 友梨が驚いて顔を上げると、蓮が俯きながら友梨の傘を押さえていた。 「え…ちょっと…」 友梨は動揺し蓮の顔を覗く。 すると、銀一に複数の女子が声をかけて来た。 「向島くん、傘無いのー?じゃあ私の傘入れてあげるー!」 「え…いや…ちょっと」 「行こ行こー!」 「…っっ」 銀一は大雨の中、女子の波にさらわれて行った。銀一が前髪を切ってからというもの、銀一もまた女子から声をかけられることが多くなっていた。 「あ…」 友梨は目を丸くしながら銀一を見送った。 「・・・」 友梨は蓮に顔を向けた。 「・・入れて…」 蓮は小さく呟いた。 「・・っ。さっきの女の子に入れてもらえば良かったじゃない。何でこっち来てんの」 友梨はツンとする。 「・・・」 蓮は黙って俯いた。 「…っ。はぁー…」 友梨はしかたなく、一つの傘で蓮と一緒に帰ることにした。 「・・・」 二人は沈黙のまま歩いた。 友梨にとって、雨が打ちつける音がとてもありがたかった。 すると、蓮が口を開いた。 「お前…この前告白されたらしいじゃん…。さっきの奴だろ?…どうなの…?」 「…っっ。どうなのって…別にどうもなってないけど…」 友梨は一瞬たじろぐが、ポツリと呟いた。 「・・・」 二人の間には、またもや沈黙が流れた。 しばらくして、蓮がまた口を開いた。 「この前の話…」 友梨はチラッと蓮の顔を見た。 「好きじゃなくなったって…ほんと?」 蓮がいつになく元気の無い声色で話す。 「・・・」 友梨は俯き黙っていた。 「友梨はさ…やっぱ最初から…俺の事、そんなに好きじゃなかったってことかよ」 蓮が俯きながら話す。 蓮の言葉に思わず友梨は顔を上げた。 「やっぱって何?」 友梨が厳しい眼差しで蓮にたずねた。 「だって…本気で好きだったら、そんなにすぐ嫌いになんかなれないじゃん」 蓮が口を尖らせ拗ねたように言う。 すると友梨は深いため息吐くと、ゆっくり口を開いた。 「本気で好きだったからこそ、悔しい」 友梨はジロリと蓮を見た。 蓮は目を丸くさせながら友梨を見る。 「本気で好きじゃなきゃ、あんなに毎回怒らない。なのにいつまで経っても私の気持ちを試すような事をした」 友梨は蓮を睨みつける。 「ごめん…」 蓮は俯いた。 「蓮ってさ、自分のことだけじゃなくて…私の事も信用してなかったって事だよね。だから、私の事を信じてくれなかったことが悔しいの」 「友梨…」 「いくら好きでも、信用できないようじゃ長続きしないよ。信用できない恋人なんて、土台の無い家と一緒じゃん。風が吹いたらすぐ壊れる。ただ好きっていう屋根だけが付いてたってダメなのよ。信用っていうちゃんとした土台が無いと」 「…っ」 蓮はハッとした表情をさせた。 友梨は続ける。 「蓮が何でそんなに臆病なのか分からない。でも、蓮だけが不安だと思わないで!私は蓮の何倍も不安だったの!蓮が何で私に告白してくれたのか分からない。蓮の方こそ、私の事…そんなに好きじゃなかったんじゃない?」 友梨は雨の音に負けないほどに大きな声をで叫んだ。 「そんなこと!!」 蓮は咄嗟に声を上げた。 友梨はすかさず続ける。 「私がいくら蓮を信じようって思っても、蓮が信じてくれてないんだもん。私の蓮に対する信用する気持ちだって薄れてっちゃう。お互いに信用できなきゃ、終わりでしょ?」 友梨は真っ直ぐ蓮を見た。 「…っっ」 蓮は唇を噛み締めた。 「この傘あげる。じゃあね」 友梨はそう言うと、蓮を残し走って行った。 「・・・」 蓮は呆然と、友梨の後ろ姿を見つめた。 蓮は過去のある出来事を思い出していた。 -- 蓮が中学生の頃- 「久岡くんってカッコいいから一緒に歩いてるだけで映えるよねー」 「イケメンと付き合うと、その彼女まで可愛く見える効果があるらしいよー!」 「・・・」 偶然教室の前を通りかかった蓮は、教室で話す女子達の会話が耳に入り陰からこっそり聞いていた。 「ねぇねぇ、もしもだよ?久岡くんから告白とかされたらどおする?」 「そりゃ即OKでしょ」 「だよねー!好きか嫌いかは別として、とりあえず付き合っちゃうよねー」 「棚ぼたみたいなもんじゃん!貰えるもんは貰っとくみたいな!(笑)」 「一緒にいるだけで可愛く見える効果があるなんて最高だもんね!」 「映えそうだし、むしろ一回告ってみようかな?(笑)」 「OKもらえたら儲けもんだよね!」 「・・・」 一連の女子達の会話を聞いていた蓮は、自分が女子達の「映え」の役割でしかないのだと思った。 -- 蓮はあの出来事以来、告白はしない、受けないを徹底していた。女子の事も信用出来ず、ますます蓮は女子に対して上面だけで対応するようになった。自分から女子を好きになる事もなかった…友梨と出会うまでは。 友梨だけは、自分を見る目やしぐさが今まで出会った他の女子達と違っていたのだ。 だから好きになり、初めて自ら告白をした。 だが…すんなりOKをもらえた事が逆に不安になり、中学時代の女子達の会話が未だに頭の中をチラつかせてしまっていた。 友梨が嫉妬する姿が、蓮の心を落ち着かせる…ある種の「魔薬」みたいなものになっていた。 「・・・・」 蓮は、自分がこんなにも弱い人間だったのかと絶望感に襲われ肩を落とした。 何気なく聞いてしまった過去の会話が、蓮の頭に強力な染みとなって取れないでいた…。 それはどんなに大雨が降ろうとも、なかなか流れない汚れであった。
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