星をつなぐ星たち

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星をつなぐ星たち

友梨が蓮に別れを告げてから、早ニ週間が経とうとしていた。 「ちょっと…友梨ちゃんいる…?」 休み時間、友梨の教室の入り口には蓮の友人である慎也の姿があった。 「馬渕くん…」 友梨は慎也に呼び出され、教室の外に出た。 そんな友梨の姿を銀一は静かに見つめていた。 「友梨ちゃん…。蓮の事…考え直してくれないかな…?友梨ちゃんはもう完全に、蓮の事はないの…?」 慎也は友梨の顔を覗く。 「・・・っ」 友梨は黙って俯く。 「蓮…あれからニ週間、毎日昼食わねーでずっと机で寝てんだよ…。誰が話しかけても、"うん"とか"すん"ぐらいしか言わねぇし…。さすがに俺もあんな蓮、見てられねぇよ…」 慎也が困り顔で友梨を見つめる。 「・・・っっ!」 友梨は驚いた表情を見せた。 「どうかアイツに、もう一度チャンス与えてやってくれよ。俺も蓮のやり方はダメだったとは思うよ?でも蓮の奴、相当反省してるし後悔してる。もう一度話してみてくれよ…」 慎也が頭を下げた。 「馬渕くん、頭上げて…。蓮…本当に…そんなに元気ないの…?」 友梨が慎也の顔を覗いた。 「もう…やべぇぐらい」 「はぁー・・。蓮ってモテるんじゃないの?何でそんなに…」 「蓮、相当友梨ちゃんの事が好きなんだよ…。ああ見えてアイツ、一途だから…」 「付き合ってる時はそんな感じしなかったけど」 「だからアイツは不器用なんだって…。ああ見えて自信がねぇんだよ、蓮の奴…」 「・・・。・・考えとく…」 友梨はポツリと呟いた。 -- その日の昼休み、友梨達が教室から出ると蓮に日頃ベタベタしていた後輩のふみ香がいた。 「友梨先輩、ちょっと良いですか?」 ふみ香が怖い顔をしながら友梨を見た。 「ちょっと、アンタ…」 友梨の横にいた千恵が言いかけると、すかさず友梨が止めた。 「大丈夫。ごめん、ちょっと先行ってて」 友梨は千恵と永奈にそう言うと、ふみ香に付いて行った。 千恵と永奈は心配そうに友梨の後ろ姿を見つめた。 「あれって…久岡くんと仲良かった後輩の子?」 ひょっこり顔を出した銀一が千恵達に声をかけた。 「そうそう。友梨があの子にどんだけ頭を悩ませたことか…。ったく今更友梨に何の用なのよッ」 千恵は苛立ちながら言う。 「友梨、大丈夫かな…」 永奈が心配そうに呟く。 「なんか…花城さん、忙しいね…」 銀一の友人である隆ノ介が呟いた。 「・・・」 銀一は黙って遠ざかる友梨達の後ろ姿を見つめていた。 -- 友梨とふみ香は人気の少ない階段の踊り場に来た。 「友梨先輩ッ!あまり蓮先輩をいじめないで下さいよッ」 ふみ香がプンプンしながら友梨に詰め寄る。 「いじめないでって…。何であなたがそんなに怒ってんのよ。私と蓮が別れて一番喜んでんのは結城さんでしょ?」 友梨はしれっとしながら言う。 「・・・っっ。不本意ですけど…今は全然嬉しくないです…」 ふみ香は俯きながら呟いた。 「え…」 友梨が驚きながらふみ香を見た。 「私は…友梨先輩と付き合ってた時の蓮先輩の方が好きです、生き生きとしてて…。今の蓮先輩…銅像ですよ。生きているのに、生きてないみたいなんです。もう…見てられません…。あれから私とか蓮先輩のファンの子達が声かけてももう全然ダメなんです…。無なんですよッ、無ッ!!今回の事で…蓮先輩がどれだけ友梨先輩の事を好きなのか…悔しいですけど、改めて思い知らされましたよッ」 ふみ香が友梨を力強い眼差しで見つめた。 「・・・っっ」 友梨はそんなふみ香に圧倒された。 「友梨先輩、これは私からのお願いです。蓮先輩の事が好きだからこそ敢えてお願いします。友梨先輩、蓮先輩とより戻してくださいッ!!私達は蓮先輩にベタベタしてましたけど、蓮先輩と浮気するような変な事は、誰一人として一切してませんッ!!私も悪かったって…思ってるんです…。あんな蓮先輩見たら私、もう罪悪感が凄くて…。だから、本当に…お願いします…」 ふみ香が頭を下げた。 「結城さん…」 友梨が呆然とふみ香を見つめた。 「友梨先輩…本当に…ごめんなさい…。蓮先輩と友梨先輩がよりを戻しても、私…もう蓮先輩にベタベタしたりしません。だから…本当にお願いします…。好きな人が…弱って行く所を見てる方が…耐えられないです…」 ふみ香は目に涙を浮かべた。 そんなふみ香を見ながら、友梨が静かに口を開いた。 「私…、結城さんに凄く嫉妬してた」 友梨が真っ直ぐふみ香を見た。 ふみ香は驚いて友梨を見つめる。 「結城さんみたいに、私は甘え上手じゃないから…。素直で自然と蓮に甘えられる結城さんが凄く羨ましかった。私ももっと結城さんみたいに可愛い要素があればいいのにって…。私みたいな可愛げのない女なんか蓮はすぐに愛想尽かすだろうって。結城さんの方に行くのも、時間の問題なんだろうなあって…」 友梨は遠くに目を向けた。 「友梨先輩、それは無いですよ…。蓮先輩は私になんか0.1ミリも靡きませんでしたから。他のファンの子よりはまだ優しく接してはくれてましたけど全然でしたよ。悔しいですけど…蓮先輩の笑顔はいつだって営業スマイルなんです。心から笑ってない事ぐらい私でも分かります。だから、蓮先輩をどうか信じてあげてくださいッ」 ふみ香は力強い眼差しでそう言った後、再度頭を下げた。 「結城さん…。蓮の為に、そこまで頭を下げれるって…結城さんは本当に蓮の事が好きなんだね…」 友梨は気の抜けた表情をした。 「そう…ですね…。でも今は、純粋に人として助けたいって思ってます。今まで蓮先輩にどんなにアタックしても、絶対に良い返事は貰えなくて…。それはどんな女子でも一緒でした。そんな蓮先輩が初めて友梨先輩に告白したって知った時から、正直言うと私…蓮先輩の事は既に諦めてるんです。だって絶対に無理ですもん。蓮先輩が本気で友梨先輩の事が好きなんだって…もう直感で分かりましたから…」 ふみ香も気の抜けた表情をする。 「結城さん…」 友梨は驚いた表情でふみ香を見つめた。 「蓮先輩は、本当に友梨先輩に一途だと思いますよ…」 ふみ香は俯いた。 友梨は小さくため息をつくと、静かに口を開いた。 「蓮は恵まれてるわ…」 「え…」 ふみ香はキョトンとした。 「さっきね、馬渕くんも私の所に来て…同じように私に頼んで来たの」 友梨は穏やかな表情で言う。 「え…慎也先輩も?」 ふみ香は驚いたような表情をした。 「馬渕くんも、結城さんも…蓮にとっては宝だね」 友梨はそう言うとニッコリ笑った。 「友梨先輩…」 ふみ香は呆然と友梨を見つめた…。 「さっき、蓮が他のファンの子よりは優く接してくれてたって結城さん言ってたけど、それはきっと…結城さんの心根が良いってことを、蓮は分かってたからだね」 友梨は優しい表情でふみ香を見た。 「…っっ」 ふみ香は驚き頬をピンクに染めると、ウットリ友梨を見つめた。 -- 「・・・」 放課後、友梨は教室の窓から外を眺めていた。 慎也やふみ香に言われたことが頭の中でぐるぐる回っていた。 蓮の今の様子は友梨が想像していたものとかけ離れ過ぎており、友梨自身も驚くほど戸惑っていた。 今まで意気揚々といたずらに笑いチャラついていた蓮が、魂の抜け殻のようになっているなど想像つかなかった。 "本当の蓮は、どんな蓮なの?" 友梨はそんな事を思いながらひたすら遠くの景色を眺めていた。 しばらくして、近くの電柱にカラスが一羽止まった。 友梨はなんとなくそのカラスを見ていると、そのカラスが遠くに向かって鳴いていた。 すると、そのカラスの声に応えるようにどこからともなくカラスの鳴き声が返って来た。 するとまた、こちらにいるカラスが鳴き返す。 どこにいるか分からない程に遠い距離でも会話をするようにテンポ良く鳴き合うカラス達。 友梨はそんなカラス達を見ていると、ふとある事を思った。 "私達は、テンポ良く会話が出来ていただろうか…" 「・・っ」 友梨は改めて蓮と話をすることを決意した。 「・・・」 窓から遠くを眺めている友梨の姿を、外からは蓮が、廊下からは銀一がそれぞれ見つめていた。
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