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辰巳蒼一は、意外に慎重な性格だ。
なので、十字路の手前に差し掛かるといつも自転車を減速させている。けれど、今日は違った。
忘れ物を取りに途中で家へ引き返したから、無意識に急いでいたのかもしれない。
「きゃっ!」
「わっ!?」
曲がり角を走り抜けようとした瞬間、現れた人影に驚いて蒼一は反射的にハンドルを右へ切った。その急激な動きに、自転車とともに地面へ倒れ込む。
マジでびびった……ってか、痛ぇ……
「だ、大丈夫ですか!?」
右足に痛みを感じてうずくまっていたら、ぶつかりそうになった人物が駆け寄ってきた。
「ああ。大丈夫大丈夫」
蒼一は相手を不安にさせないよう、笑顔を用意して顔を上げた。
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