星の終わりにくちづけを

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 えんぴつを置いた俺は、背伸びをした。 「はぁ……」  吐いた息には、ため息もまじっている。執筆している小説をなかなか書き進められていないからだ。  気づくと、目の前の窓のずっと先に映る湖をながめてしまっていることが多い。  風がなく、天気のいい日には、空やこの周囲を囲む山が湖面にきれいに映ることもある。  もう誰もいないココに住みはじめて、そろそろ1年がたつ。いっこうに小説のしめくくりが思いつかない。  書きあげたところで、決して誰も読むことはない。  だからこそ、気軽に自由に書けばいいと思っていても、高望みした理想を落としこもうと書けなくなってしまっていた。  日はまだ高いが、おんぼろな時計は夕方の時刻を指していた。 「今日も書けなかったよ……」  俺はふたたび湖に視線をやった。窓に映った自分ではなく、湖畔にずっと立っている紫色の使に向かって言ったのだ。  天使といっても、その立ち姿は人型で、頭にはウサギの耳のようなものをピンと立てている。天使の輪もある。
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