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どこから来たかは知らないが、服はきれいなままだった。隣町から歩いても数日。こんなところへやってくるまでに汚れないわけがない。
「んっ……」
彼女の閉じたまぶたがわずかに動いた。ケガをしている様子はない。
このまま放っておくこともできず、彼女を抱えて家に戻った。ソファに寝かせてしばらく様子を見ていたが、目を覚ます気配はなかった。
彼女をじっと見ていると、死んだ妻に似ている感じがした。
――まさかな。
俺はまた夕飯の材料を取りに行った。
妻は、1年半前に一人娘と一緒に死んだのだ。
――もしかして、どちらかの生まれ変わりとでもいうのか。
俺は首を振って、映画のような物語の可能性をかき消した。
彼女が目覚めたときに、口にしやすい野菜を煮こんだスープを作ることにした。
野菜は品祖なものばかりだが、量はあった。畑を広げる土地ならいくらでもあった。
少しばかり高地な場所ではあったが、気候変動のあおりを受けて、日中は暑いくらいだ。
生態系もそれに合わせて、変わりつつあるが、自然はどんどん順応していくことに驚いた。
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