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彼女にスープを手渡すと、両手でかかえてそそっと口をつけた。
ひと口飲んでからは、スプーンで具材も口に運んであっという間に食べきった。
「おかわりする?」
彼女は静かにうなずいた。
俺はほとんど口にしていない自分のスープをテーブルに置いた。俺の作ったスープを飲みほす彼女を見つづけてしまっていた。
2杯のスープで体が温まったのか、顔色がよく見えた。
「名前、聞いていいかな?」
「あ……エリーです。助けていただき、ありがとうございます」
彼女は軽く頭を下げた。
彼女の名前を聞いて、俺の体は硬直した。
――同じ名前だ。死んだ妻の名前……エリー。
――どうしてココに……なんで年齢も若返って……。
「エリー。君はどうしてこんなところにいるんだい?」
焦り、不安、そして期待が俺の鼓動を強くする。
「ど、どうしてって……」
エリーはどこか焦点をあわさないまま記憶をたどった。
「……んーん、思い出せない……」
頭を押さえて左右に首を振った。
「あっ、無理に思い出さなくてもいいさ。ココには他に誰もいないし、ゆっくりしていればいい」
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