星の終わりにくちづけを

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 以前、試しに湖の反対側から天使を見たことがあった。それでも、天使は俺を見ていた。  どうあがいても、天使からの視線から逃れることはできなかった。それ以来、俺は天使の視線を気にすることをやめた。  エリーがうちに来てから3日がたった日の深夜。  自分の部屋で寝ていた俺は、小さな声が聞こえて目を覚ました。  ベッドに横になったまま、耳だけをすます。薄明るい窓の外や家の中に人の気配はない。  別の部屋で寝ているエリーかと思ったが違った。 「た す け て」  小さな声だったが、今度ははっきりそう聞こえた。  変な声を聞いてしまったのかと、俺は驚いて体を起こした。部屋を見回しても誰もいない。 「た す け て……たすけて……」  声の前後に、ザザッと電波が乱れるような音も混じっていた。  ――まさか。  俺はベッドから飛び出て、本棚の前に立った。もう読まれずにほこりをかぶった棚と本。その中に、オブジェがあった。  そのオブジェは、導線が筒に巻かれていて、ダイアルがあり、枠に小さな石がはめこまれている。その石の表面をなぞれるように、細い金属棒が支柱に支えられていた。
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