新学期前夜〜あいのさいのう〜

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 兄貴を、おれの部屋に連れてきた。  実の兄なので、当然部屋に入れたことは何度となくあるが…(そもそも昔は同じ部屋だった)。なんだこの初めて彼女を招いたような、罪悪感にも似た緊張は。兄貴にもおれの緊張がうつったのか、どこか所在なげにしている。  「え、えとみな君…。同い年の筈だけど、みな君のがずいぶん背高いよね。甚平借りた時にも思ったけど、兄の威厳がなくなっちゃうなあ…。なんて、えへへ。可愛い可愛いって言ったら、駄目だよね。今のみな君…すごく格好いいよ」  「そ…そんなことねえよ。おれは小学生ん時、早めに成長期が来ただけで。それに、褒めてくれて嬉しいけど…。今の姿、実はそんなに好きでもないんだよな。色々、思い出してさ…。ははは」  つい口を滑らせると、兄貴は今にも泣きそうな顔をした。  「そ、そうなんだ。お兄ちゃんのせいだよね…。ある程度聞いてる。ぼくがいなくなって、お母さんのこととか累くんのこととか色々大変だったって。う、ううう。ごめんなさい、全部ぼくのせいだ」  「ちょ、泣くなって。兄貴のせいじゃないんだから。前にも言ったろ、兄貴が泣いたら…」  深く考えた訳ではないが、勢いで兄貴にキスしてしまった。  「…おれも悲しいって。気にするなよ。累がああなったのは、累自身がアレだからだし。お母さんだって、いつまでも今のままじゃねえぞ。いつの日か全てを受け入れて、この家に帰ってくると信じてる…。な?」  そう言うと、兄貴はやっとのことで笑顔を見せた。  「うん、うん。そうだよね…。ところで、流れでキスさせちゃったけど、元に戻らないね?お姫様がどうのこうのって話だったし、お兄ちゃんの方からしないといけないのかな」  そう言って、おれにキスしてきた。失踪から戻って幾度となくキスしてきたが、兄貴の方からしてもらうのは初めてじゃないかな?  「…戻んないね。もっと、ディープぎみじゃないといけないのかな」  「お、おう」  おれと兄貴は二人でベッドに寝そべって、しばらく抱き合いながら舌と舌を絡めあった。お互いの唾液が糸を引くほど頑張ったが、身体が元に戻る様子はない。    「…だめだな。これは、アレだ。もっと、色んな体位で試さなきゃいけないのか」  「た…体位とか、あるの!?」
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