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そのままリビングまで抱き合いながら(端から見たら滑稽だが)、明るい場所までやってくるとやっと裕次郎が腕を離してくれた。
大型犬が手加減なしにのしかかってきたせいで、俺の背筋が幾ばくかの間鍛えられた。
「もう怒ってません?」
眉を落として聞いてくる裕次郎の鼻先をきゅっと指で摘む。
「なんれすか」
こてっと首を傾げる裕次郎に「馬鹿だなこいつ」と思いながらほっぺをむにむにと遊んでやった。
俺の行動を分析したのか、だんだんと張り詰めた表情が引っ込んでいく。裕次郎は俺にされるがままを嫌がることなく、甘えるように擦り寄ってきた。
「了さん。俺で遊んでますね……」
「ああ。ダメか?」
「いや、いいです」
くしゅっと笑う顔がひまわりみたいに眩しくて俺は目を細めた。
「飯にしよう。めかぶ入りの肉じゃがなんて栄養満点だろ」
「ですよね! 味付けには自信あるんです」
先程とは打って変わって満面のへらへら顔になった裕次郎を見てまだまだガキだなと笑っていると、そんな子供を遊ぶ俺もガキじゃないかと心の声が返ってきた。
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