魔王の顔が青ざめるとき

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 魔王は不敵な笑みを浮かべていた。  策略家である彼は人間と直接的に争うことはせずに、2つの勢力を憎しみ合わせることで、自らの勢力を少しずつ増強していた。  もちろん、そんなやり方を、古参の部下の一部や故郷の魔界では魔王らしくないと思う者も多い。賢臣テオドシウスもそのひとりだった。 「予定通り、聖王国の姫を連れてまいりました」  聖王国の姫は、すっかりダークユニコーンのテオドシウスに魅了された様子で騎乗していた。魔王はその様子を不敵な笑みを浮かべながら頷いている。 「これで戦争には及び腰だった聖王も、目の色を変えて帝国に攻め込むだろう」  テオドシウスは真剣な表情で魔王を見た。 「陛下、古参の部下の中には武功を上げる機会が欲しいと願い出る者が大勢います。そろそろ…」 「おいおい、お前まで何を言うのだ…」  そこまで言うと魔王は赤々としたワインを口に含んだ。その原料がブドウなのか、それとも別の液体なのかはテオドシウスも語ってくれなのでわからない。  魔王はその謎の液体で口を湿らせてから、笑った。 「私はな、人間が自らの手で同族を手にかけるところを見るのが好きなのだ。喰いモノが欲しいのなら、荒廃した戦場に幾らでも落ちているしな」 「は、はあ…」
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