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それから30年後、魔王は嬉しそうに微笑んでいた。
聖王国と帝国の戦は長きに及び、膨れ上がる戦費を調達するために税金を上げていた。この増税に悲鳴を上げたのは農民たちだった。ただでさえ生活が苦しかったところに、若い働き手を軍隊にとられ、敵の攻撃を受けて農地は荒らされ、更に増税を課されたら生活ができなくなる。
黒一角獣のテオドシウスは、再び魔王に謁見を願い出た。
「陛下、2つの王国は疲弊しています。今こそ兵を上げ…」
「まあ待て、一角獣よ」
魔王はそう言うと、恐ろしい生き物であるはずのドラゴンの頭を撫でていた。
「下々の者たちの気持ちも少しは考えよ。今まで、地位のある矮小な者たちにたっぷりと痛めつけられてきたのだ。ここで我々が手を出せば、彼らは怒りをどこに向けたらよいのだ?」
「そ、その通りでございますが…部下たちの不満は既に…」
魔王はため息をついた。
「わからん奴らよのう。他にも力のある魔王はいくらでもいるのだから、不満があるのなら他国にでも仕官すればいい」
「わ、わかりました。そう伝えてまいります」
それから間もなく、大勢の部下が城を去ったが魔王に慌てる様子はなかった。
自分自身がとても強い魔力を持っているうえに、今の2大勢力は戦争で疲弊し、更に各地で農民の反乱がおこりはじめているため、その矛先が自分に向けられることはないと確信している。
そして、その勘は的を射たものだった。
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