魔王の顔が青ざめるとき

3/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 それから更に15年。魔王はまるで美酒に酔ったかのように低い笑い声を出していた。  農民たちのクーデターは成功し、まずは帝国が倒れ、次に聖王国も滅亡の憂き目を見た。農民たちは、元王国の場所に議会を立て、それぞれの場所に民主国家を立ち上げた。  そこまでは良かったのだが、元聖王国と元帝国の国民の仲は度重なる戦争で悪いものになっており、領土を巡って激しい対立を繰り返していた。まさに一触即発の状態である。  魔王はすぐに、テオドシウスを呼んだ。 「お呼びですか?」 「なあ、テオドシウス…この小さな島には、実は大きな大きな金脈が隠れているのだが…それを知った人間はきっと喜ぶだろうなぁ」  魔王が指さしたのは、2国のちょうど間に位置する小島だった。テオドシウスは察したようだ。 「今度は何を企んでいらっしゃるのですか?」  魔王は薄ら笑いを浮かべながら言った。 「久しぶりに人間の喜ぶ顔が見たい。旅行ついでにぐるりと1周回って来い」 「は、ははっ…」 「ああそうそう。金色に輝くことを忘れないようにな」  この魔王の目論見も見事に的中し、金色の馬の出現に多くのトレジャーハンターが関心を寄せた。彼らは島に乗り込むと、神聖なものと忠告して入山させない村人たちを殺傷した。  トレジャーハンターたちは邪魔者がいなくなったと安心して互いに争い、草の根を分け、魔王の言う金鉱脈を発見した。  もちろん、突然の金鉱脈の出現に、列強民主国2国は目の色を変えた。彼らはすぐに持てる限りの海軍力をもって島の制圧に乗り出し、島の西側を元帝国軍、島の東側を元聖王国軍が占拠した。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!