魔王の顔が青ざめるとき

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 それから更に10年。魔王は愉快で愉快でたまらない様子で机を叩いていた。  元帝国の国民が毒ガスを用いて、元聖王国の街を攻撃したためだ。運悪く街に居合わせた人間はバタバタと倒れ、元聖王国の国民は怒りに震えていた。  元聖王国の技術者たちも寝ずの技術開発にいそしんだ。彼らは人類で初めて気球を作ると、そこに大量の爆弾を持って元帝国の街を爆撃した。  次々と戦火で焼かれる人々を見た魔王は、少年のように目を輝かせた。  元帝国の民ももちろん黙ってはいない。彼らはバトルタンクを先頭に元聖王国領へと踏み込んでいく。雨あられのように銃弾や爆薬が飛び交い、1日に1万人以上もの人々が犠牲になる日もあった。  魔王は嬉々とした様子でテオドシウスに言った。 「見ろ、テオドシウス…愚かな生き物に刃物を持たせると、こうなるのだ」  テオドシウスは不満そうに言った。 「陛下、わたくしは人間という種族は自然と共に生きるべきだと…」 「お前の意見など聞いていない」  魔王の一言を聞き、テオドシウスはとても幻滅したようだ。 「陛下、やはり理想というものは人任せでなく、自分自身で追及しなければいけないということがよくわかりました」 「そうか、今までご苦労だったな」  黒一角獣のテオドシウスは一礼すると、魔王の前から立ち去っていった。 「おお、この軍艦…よく弾が飛ぶな。こんな玩具では我々には通じないが、見世物としてはおもしろい」
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