キャンディ・ボックス(仮題)

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 2080年。政治、経済、etc、全ての機能はすでに失われている。 世界は一変した。たった1本の動画がきっかけで…。 『キャンディ・ボックス(仮題)』と名付けられた、1本の動画がアップされために。 そこに写し出されていたもの、それはあまりに恐ろしく、語ることは決してできない。いや、語れないのだ。 誰が制作したのかは分からない。ただ、ある権威ある科学者(遺伝子学者?超能力者?)がある国家に依頼されて作ったという説が有力とされていた。もしくは宇宙人による陰謀説。 唯一知る手がかりとなるのはそこに登場して携わったと思われる男優の存在だが、業界内では5千人斬りのベテランの域で有名であるにもかかわらず、その行方は掴めなかった。 製作元は「ギルティ」と銘うってあった。日本だった。 見たものはいるが見た瞬間、DNAのジャンクにあたる部分が20%目覚めてしまい、その動画の内容を語ろうとしないため、はっきりとはわかっていない。 ただ始まりはシンプルであるとだけ確認されていた。ただひたすら、 男優がモザイクの入った女の子に金玉(裏金)を舐めさすといったものだった。 それが約5分続くらしい。そして…・どこかの森の上空(古墳?)が映し出され・・…クローズアップしていき・……。 ------------- 3年前だった。神戸のある地域に、深夜、男が裸の女の子を数人従えて歩くのがポツポツと見られるようになった。 日に日にそれは増殖していき、1ヶ月後にはあらゆる所で『ハーメルンの笛吹き男』現象が起こった。 男達に共通してた事はある動画を視聴してたことだった。 みなどこかに向かい、ほとんどがどこかの森(山奥)に向かい、素っ裸で『ウワーーーーーーーー』と叫びながら、 すごい形相で走ったりしだした。 それはSNSなどで拡散され日本全国に爆発的に広がった。 その動画は視覚から脳に、金玉の細胞組織に刺激作用した。まず、男の能力が変わった。 眠ってた力が目覚めた。新人類となった。催眠術作用を起こせるようになった。それで、女を操ったりしだした。 それより、ものすごいフェロモンが背中から出ていることがわかった。それを吸った女もおかしくなった。 いままでの3億倍とされているフェロモンは、空気感染もした。 感覚が研ぎ澄まされ、ちょっと触られただけで「あ、ヤバイ」と女が言い出すようになった。 真面目な主婦でさえもソロ活動といいながら浮気を繰り返すようになった。 街中の喫茶店が出会い喫茶に変わった。 ライブハウスが半ぐれの忘年会場みたいになった。 頭も自然と公式を導いたりした。早口でぼそぼそと。風水にも精通しだした。ラテンのリズムを愛しだした。 ------------------ 生殖器も飛躍的に進化した。そして・・…、常に発情期状態となった。 だが、寿命は3分の1になったと推定される。 論争、酒池肉林、論争、酒池肉林の繰り返しとなった。 半笑い、ナーバス、半笑い、発狂、の繰り返しだ。 時として、含み笑いも・・・。 Hの数をカウントしだした。5千になったら急に本来の自分を取り戻した。それはわかった。 メキシコシティにいた、ある若者がその数を叫んだときが最初らしかった。 世界にまで広がっていた。 抑えきれない秘められた性本能が動画により、危険な性的パンデミックを世界中に広めた。 ---------------- 2085年、世界でセックス革命が起こった。 かかったフリしてめちゃくちゃする似非新人類も最初は出回ったが、性器のサイズでそれは判別できた。 朝と夜ではチンコが5センチ違う。 アイドルがテレビで脱ぎ出した。貧乳やのに乳輪ばりでかいアイドルまでも脱いでいた。恥じらいなどなかった。 ハリウッドでもシモネタ爆発の映画ばかり撮るようになった。それがアカデミーを独占した。 最優秀作品賞受賞作品は『ピンク・フラミンゴの片足立ち』だったように思う。内容は無いに等しい。 --------------------- 世界は大発情期時代となった。 サラリーマンはだれもいなくなった。山菜とかをたべだした。胃も丈夫になっていた。 世界で文明が残されたのは、それまで文明の閉ざされていたところのみとなった。 アフリカの奥地の奥地、ネット環境や電気も走っていない21世紀にもなって考えられない世界が、 唯一文明を守ることの出来た社会となった。 しかし、そこも時間の問題だった。空気感染が大気圏レベルで発生していた。 オゾン層の破壊部分がフェロモンでうめつくされていたのだ。 誰1人疑問を抱くものはなかった。神が与えし本能が『生殖』であるならば、人間が作った『理性』など存在の意味はなかった。 目と目があった瞬間に、男の裏金は女の舌の上を、あたかもキャンディを転がすように踊り転げていた。 その姿を目にした別の男も、その行為に参加した。何人も何人も・・・。 金玉はキャンディボックスとみなされ、女はアマゾネスと化していった。 人々はそれを祭りと呼ぶようになった。 ---------------- 2090年、全世界が一変した。 中東では、宗教戦争は休戦したが、しゃぶられたい男と入れられたい女の戦争が勃発した。 自らの欲求を優先した戦い。後戯はあまりしなくなった。もちろんのこと前戯などもってのほかだった。 許されざるセックスなど、すでに存在しなかった。 心配された性病も、進化した体にとってはたいした問題でなくなった。 感染したところで意味をなさなかった。 3分の1にまでなったといわれる寿命。時間に対するエネルギーの消費が関係してくる。 入るコンドームはなかった。パンストみたいなんを被せてた。ただ、精子の数が以前の数億個から数百個に変わったので、 なかなか妊娠はしなくなった。子作り目的のセックスでなかったことも要因にあげられる。 そして、5千という数が過ぎれば発情期は激変する。 落ち着いてきた人から、生活基盤を築くようになった。 でもまだそこには寿命と落ち着く時期のずれという問題があり結果、死にいたらしめられるのだった。 以前の煩わしい人間関係や世間のしがらみはなくなった。本能のまま、求め合った。いや、本能を超えていたかもしれない。 製作者の行方や意図はまだつかめていない。 ---------------- 2095年。世界人口の99.9995%の人間が、新型エイズウイルスに感染。 もっとも、性病など既に意味をなさないことはわかりきったこと。 寿命との因果関係も取り沙汰されたが、誰1人として耳をかすものはいない。 それよりも、取り沙汰されたこと自体が、存在していないのかもしれない。 --------------- 2100年。変型した魚の死骸が大量に発見される。人類がもたらしたフェロモンが原因とされる。 --------------- 2999年。地球は・・・・・。 ------------------- 惑星年間、13800000976年。(地球暦、3083年。) 地球人が知能を持つ生物として、宇宙に存在したと思われる最後の証拠が、この程、惑星探査機構太陽系調査団072部隊(通称:オナニー部隊)が、 ある地球人の毛髪の化石のDNAを解読したところ、『ココロ』という項目に記されていたもので判明した。 ちなみに記述しておくと、当時の地球人の知能レベルはマリモと同等レベルまで落ちていたらしい。 一部解読不明な点もあるが、それは、歴史と照らし合わせてみればおかしくはないらしい。 それどころか、『ココロ』という項目の存在がキセキといっても過言ではないらしい。  なお、072部隊との交信は、この発見文、および隊長からのメッセージの通信の後、途絶えている。 ※※※※※※※※※※※※※ 『・・・。ただ、正常さをなくし、何に価値や基準をとるのか分からなくなった中でも、同じ相手と百回したとき、それを恋と呼んだ。同じ相手と千回したとき、それを愛と呼んだ。 同じ相手と5千回したとき、それを永遠の愛と決めた。そして・・』 地球は不思議な星であった。最強の生物、ありとあらゆる文明が生まれては消えた。キョウリュウ、マヤ、ナスカ。そして、シンジンルイ・・・ 地球における最後の人類はみな漠然と恋や愛、そんなことを感じてたに違いない。 宇宙史上もっとも進んだ優秀な生物の消滅。「歴史はくり返す」なのかもしれない。 それはおごり高ぶった人間への神々の怒りだったのかもしれない。 次は我々かもしれない・・・・・。 ※※※※※※※※※※※※※ -------------------- 『隊長!!カプしてあげよっかぁ?』 『ふむ。裏金を攻めてくれ、アンナ隊員!』 いや、既に始まっている。
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