(三)

1/7
1020人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ

(三)

 思わぬ訪問客のおかげで、私は仕事中動揺してしまい、同僚にも心配された。ともあれ仕事自体は大きなミスなくこなして退勤した。  そしてロッカールームでロッカーの扉を開けた。そこで大きなため息が出た。  伊輔が生まれる前からのそのようなドタバタと、生まれてからの育児のドタバタで、それまで色々な事を考える余裕がなかった。そのおかげで、過去について考えることを忘れることができていた。しかし、カフェのカウンターから彼と彼の奥さん、そしてベビーカーの赤ちゃんのことを目の当たりにして、私は改めて自分の過去に目を向けさせられることになった。 (続く)
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!