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「お似合いですよ、そのバック。何か気持ちが引き締まりませんか!」
翔子の問い掛けに岳彦は頷くと、
「はい、本格的なものはやっぱり違いますね。よーし、頑張るぞって感じです。」
それはバックのせいも多少はあるが、翔子とデート出来る喜びが大半である。
電車はもうすぐ大船へ着く。
「あの白い観音様、私、好きだな。」
翔子は車窓から見える大船観音を目で追いかける。
「微笑んでいるようで、とても癒されますね。まるで翔子さんの様です。」
「神仏っていつも誰かの心を癒せる存在なのよね、ずっとずっと・・・」
翔子はそう言うと、大船観音を目で追った。
まもなく北鎌倉、北鎌倉のアナウンスが流れる。
ふたりの鎌倉紅葉の小さな旅が始まった。
北鎌倉駅からまずは明月院を目指して歩き出すと、円覚寺の見事な紅葉が直ぐに出迎えてくれた。
真っ赤に染まったもみじの葉が、真っ青な空色に溶け込んで、まるで競い合うかの様に輝いている。
初秋に訪れたばかりであるが 、季節ごとに趣を変える花の寺、ワクワク感がふたりの足取りを軽くした。
横須賀線の踏切を渡って左に折れると明月院の入口である。
「明月院は絵葉書で有名な階段があるんですよね。来年の紫陽花の季節に翔子さん、此処へ来ましょう!」
翔子は素直な岳彦の気持ちにそっと頷いた。
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