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拝観料を払うと、ふたりは明月院の境内へと入った。
随分と可愛らしい月の広場で癒されると、本堂へと誘う木の階段を歩き、石畳の階段を上がる。
透き通る空の青と葉の赤、黄色・・・初春で芽吹いた緑たちが、今、ここで最後の輝を見せ付ける。
そして落葉となり、風雨にさらされて栄養分を母木に与え、初春の緑を生む。
「翔子さん,、あの円窓から見える庭園、風情がありますね。」
撮影スポットで、多くの観光客がカメラを手にして長蛇の列を作っている。
「岳彦さん。庭園に入れるみたいですよ。」
翔子はそう言うと、特別拝観の看板を指差した。
岳彦は、円窓からの撮影に興味津々であったが、庭園に入れる事を知ると、お参りを済ませて方丈の脇から拝観料を払って翔子と一緒に庭園に入った。
「広いな!素晴らしいですね。」
明月院のみならず、鎌倉のお寺や寺院は、山間の尾根沿いに縦長に広がっている。
特に明月院の庭園は、その構えからは想像出来ないほど広い。
正面から見る円窓の全景にふたりは居る。夜になると月あかりで照らされた庭を狐や狸が戯れ、うさぎも来るに違いない。
翔子はそんな事を想いながら岳彦と明月院の紅葉を楽しんだ。
明月院を後にしてふたりが向かった先は天園ハイキングコースである。
「明月院からもハイキングコースへ入れるんですね。」
岳彦は健長寺から歩いた事はあったが、明月院からは初めてである。
「ちょっと山登りって感じですよ。」
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