紅葉 

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翔子はネットで調べていた。 今の時代、インターネットで簡単に調べる事が可能であるが、岳彦は調べずに、自分の目で確かめる事にしていた。 車の取材で打ちのめされた苦い経験からである。 翔子は岳彦の事情を知らない。 「翔子さん、分かりました!お祭りなんですよ!イチョウやモミジが風に揺られて舞っている。獅子の顔って赤いでしょう!」 翔子は、微笑みながら頷くと、 「そうね!そんなふうに見ると楽しいわ!」 岳彦は大きく頷くと、 「翔子さん、そこの岩に乗ってポーズして下さい。後ろのモミジが映えますから。」 翔子は、この付近に点在する岩が獅子の様に見えるので獅子舞の谷と呼ばれているといった事をネットで調べて知っていたが、岳彦の感じた事の方がふさわしいと思った。 何を感じ、何を思うかは、人それぞれに違うのが当たり前である。 翔子は落ちている銀杏の実を拾うと、笑顔でポーズをとった。
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