想い

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「鈴木君、明日から僕と一緒に大阪の御堂筋店に行ってくれないか。店舗の様子を部長から視察するように命令された。」 翔子はちょっと驚いたが仕事である。 「翔子、菅谷さんって翔子に気があるんじゃないかな?それで翔子をお供に!」 帰りのバスの中で、遼子が冷やかす様に翔子へ言った。 「遼子さん、仕事ですよ。大阪は初めてだし、道頓堀ってあのグリコの看板とタイガースが優勝したら飛び込んだ橋があるんでしょう見てみたいわ。」 翔子はそう言うと、鎌倉のガイドブックを閉じた。 「ねぇ、翔子。鎌倉ってそんなに良いの?今度、連れてって!小町通りとか楽しそう。」 「遼子さんは本当に行きたいの?前にもそう言ってだけど、小町通りは素敵な通りで美味しい食べ物も沢山あるから。でも、カップルだらけであてつけられちゃうかもね。」 翔子は閉じたガイドブックを開くと、小町通りが紹介された頁を開いて遼子へ渡した。 遼子はしばらく目を通していたが、 「彼氏が出来たら行くわ翔子。」 翌朝、翔子は菅谷と待ち合わせの東京駅へと向かった。 約束の時間は8時30分。待ち合わせ場所は銀の鈴である。 東京から新大阪までは、新幹線で約2時間半。十分に日帰りが可能なスケジュールを組めるが、おもてなしいう翔子にとっては厄介な行事が存在した。 よって一泊をホテルで過ごす。本社からの視察を兼ねているとなれば、致し方のない事でもある。
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