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冷めるのが早いカップ珈琲を飲みながら菅谷を待った。
「おはよう翔子君、早いね。」
「菅谷さん、おはようございます。」
菅谷は、紺色のスリーピースのスーツにベージュのコートを羽織り、清潔感も十分である。
「飲み終わったならホームに出ようか。」
「はい。」翔子は紙コップを捨てるとバックを持って立ち上がった。
相変わらず男達の翔子への視線は、一緒に歩き出した菅谷が感じとっていた。
大阪・・・阪神タイガース、大阪城、道頓堀、そしてUSJ。
菅谷は乗車するとノートパソコンを開いて、キーを叩いて仕事をしている。
翔子はお気に入りの鎌倉のガイドブックを開いて、時間を潰した。
ふたりの間には全く会話がない。
新大阪へ着くと、地下鉄に乗ってなんば駅を目指した。
電車内の関西弁の会話を聞くと、実際は柔らかくて優しい話し方である。お笑い芸人のしゃべり方とはだいぶ違った。
「鈴木君、次の駅だ。」
僕は東京を出てから新幹線の車内でも彼女とは会話をしていない。いや、彼女から話し掛けて来るのを待っていたが、彼女は本を読んでいるだけで・・・僕に興味はないのか?
ちょっと待て、俺は彼女が好きなのか?
彼女とはもちろん翔子の事である。
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