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よし、これで準備は万端、翔子の心は三陸の小さな街、故郷の家族と大きな海にあった。
翔子は東京駅のホームに立った。
8時のはやぶさに乗れば2時間で仙台そこからローカル線で1時間で翔子の故郷へお昼前に着く。
岳彦が見送りに来てくれて、銀の鈴のカフェで歓談して別れたばかりである。
「すっかり東京の人だね、皆んなびっくりすると思うな、ゆっくり故郷と家族に甘えると良いよ。」
岳彦は、翔子の嬉しくてたまらない表情が良く分かった。それは故郷、家族に会える気持ちの表れである。その表情が自分に会う時に成ってくれたら、そう思って改札口で翔子と別れた。
東京の人?古い言葉である。今から30年、40年前ならいざ知らず、田舎者という言葉もグローバルの時代には風化して行くだろう。あの大谷翔平選手は翔子と同じ東北の出身である。
着いた!!
翔子は潮の香りに故郷を感じとると大きく背を伸ばした。
その時、背後から肩を叩かれて、驚いて振り向くと、弟の康二が満遍な笑顔で迎えに来てくれていた。
「姉ちゃん、お疲れ様、ようこそおいで下さいました。」
「何言ってるの!私はお客さんじゃないでしょう。」
そう言った後に、翔子は涙が溢れてくるのを止められずに康二に微笑んだ。
「姉ちゃん、べっぴんさんに成ったな。」
今度は照れを隠そうと康二を睨むと、康二も涙を瞳に溜めていた。
「姉ちゃん、これ僕のお土産だろ。」
そう言うと大きな紙袋を持って歩き出した。
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