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「あなたのだけじゃないよ!康二。」
康二は振り返ると、大笑いをして走り出した。
「こら、待って。」翔子も後を追う。
優しい弟、それが嬉しかった。
「母ちゃん、姉ちゃん着いたよ!」
直ぐにでも顔を見たいのを抑えて、一呼吸間を開けて葉子が出迎えた。
「翔子、お帰り、元気そうで何より、お昼まだでしょう。」
「お腹すいた、久しぶりに母ちゃんの料理が食べれる。」
居間には翔子の好きなおはぎと、里芋の煮付け、それにウニとイクラがお皿に盛られていた。
「父ちゃんは役場?」
父親の宗ニは、今年から冬の間は役場で清掃の仕事をしている。
「姉ちゃん、父ちゃんは夕方には帰って来るよ、それよりお昼食べたら下の家へ行こう!爺ちゃん婆ちゃんが待ってるから。」
「そうだね、お土産渡したいし。」
葉子はそぶりや言葉使い、何より翔子の表情が何も変わっていない事にホッとすると、東京での暮らしが上手くいっている事を察し、自然と笑顔に成った。
翔子は、おはぎを二つたいらげて、お茶を少しばかり飲むと、大きな紙袋からまずは葉子へセーターを渡した。
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