遼子の恋

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帰路は埼玉県の中央に位置する東松山インターへと車を走らせる。 熊谷の街を通り抜けると田園地帯が広がり、ちょっとしたドライブ気分。 助手席には、美人の遼子が座っている。黙っていれば可愛い女性なのに・・・それに居眠りは常識知らずである。 そんなふうに思って菅谷は運転していると、田んぼ道との交差点で、軽トラックが轍にはまって身動き出来ない状態で、老夫婦が車を持ち上げている光景が目に入った。 「あれ、大変だ!」 遼子はうとうとしていたが、菅谷の声に我に帰った。 菅谷は車を左に寄せてハザードを点灯させると、勢いよく老夫婦の元へと向かった。 見ると、後輪の左のタイヤが轍に落ちている。 菅谷は上着を脱ぐとワイシャツのボタンを外して腕をまくり、 「これなら私が持ち上げられそうですから任せて下さい。」 そう言うと、轍に入って両手を荷台にあてると、歯を食いしばって踏ん張った。
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